
先日の夕飯は、焙煎カレーでした。
焙煎された粉タイプのカレールーを使って作ったカレーで、普段よく使っているバーモントカレーなどの固形ルーとは、少し方向性の違うものでした。
いつもはその時の気分で甘口にしたり、中辛にしたり、ルーの種類を変えることはあります。ただ、それはあくまで「同じカレーの中での違い」という感覚で、今回の焙煎カレーは、作る前からどこか別物のような印象がありました。
正直に言うと、これまで「焙煎カレーとは何か」と聞かれても、はっきり説明できるほど理解していなかったと思います。
作り始めてすぐ、その違いははっきりと感じられました。
鍋に粉のルーを入れた瞬間、立ち上がる香りがいつもとまったく違っていました。スパイスの刺激というより、香ばしさが前に出ていて、どこかコーヒーやトーストのような「焼き」の香りがしました。
その時、「これは喫茶店のカレーだな」と自然と納得したのを覚えています。
完成してひと口食べてみると、辛さよりも先にコクを感じました。
味に奥行きがあり、少しビターで、大人っぽい印象でした。いつもの家庭のカレーが「安心感」だとすれば、焙煎カレーは「落ち着き」や「深み」といった言葉がしっくりくるように感じました。
気づけば無言で食べ進めていて、あっという間に一杯目を食べ終えていました。
そして、ごく自然な流れでおかわりをしました。
本当は少し多いかなと思いながらも、「もう一杯くらいなら大丈夫だろう」と自分に言い聞かせていました。
結果的にはしっかり満腹になりましたが、不思議と後悔はありませんでした。それだけ満足感が高かったのだと思います。
これまで喫茶店のカレーを食べて、「なぜ家のカレーと違うのだろう」と漠然と感じていました。
特別な具材が入っているわけでもないのに、なぜか記憶に残る味。
今回、焙煎カレーを食べたことで、その理由の一端が分かった気がしました。
スパイスを前に出すのではなく、しっかりと焙煎することで香りとコクを引き出している。その積み重ねが、派手さはなくとも印象に残る味につながっているのだと感じました。
普段、カレーは「いつもの味」として何気なく食べています。
忙しい日でも作りやすく、家族にも喜ばれる定番メニューです。
しかし、今回のようにルーを少し変えるだけで、ここまで印象が変わるのだと知り、まだ知らないカレーの世界がたくさんあるのではないかと思いました。
これは、カレーに限った話ではないのかもしれません。
普段と少し違うものを選ぶこと。
いつもより一段階だけ違う選択をしてみること。
それだけで、新しい発見や、新しい好みが見つかることがあります。
高級な食事をするわけでもなく、大きな出費をするわけでもなく、日常の中の「ちょっとした変化」は、十分に楽しめるものなのだと感じました。
今回の焙煎カレーは、そんなことを改めて教えてくれた一皿でした。
次はまた、いつものカレーに戻るかもしれませんし、別の焙煎タイプを試すかもしれません。
ただ、「なんとなく」で選ぶのではなく、「少し試してみよう」と思えたこと自体が、すでに大きな収穫だったように思います。
カレー一杯でも、好奇心を向けることで、日常はきちんと面白くなる。
そんなことを思いながら、満腹になったお腹をさすっていた夜でした。





